ある程度噛み合わせというものが理解できてきて、色々なセミナーの話を聞いて、それなりに実践していた頃のことである。
 総義歯の患者さんが来院されて、この時ぞとばかりと、真剣にアプローチさせてもらった。

 型を取り、模型を起こし、噛み合わせを確認し、試適し、入れ歯装着の時が来た。

 「噛み合わせが合っていない!!!」焦った。

 最初、技工所のミスかと思い連絡を取り、工程を確認するが、客観的に観ても、おかしい所はなかった。
 自分の工程も振り返るが、落ち度はなかった。

おかしい。不思議だ。技術的な問題なのか?・・・

気持ちを切り替えて、患者さんに型を取ってから入れ歯ができるまでの間に、生活の中で何か特別な変化が無かったか確認をしてみた。
精神的な問題が考えられたが、そんなことはなく「わしゃー元気だよ」と笑いながら言葉が返ってきた。

「でもなー、先日階段から落ちて腰を打ってしまったよ。」

これだ、これしかないとピーンときた。

この時だった。身体のバランスを見極め、整える事が出来無ければ、噛み合わせがどうのこうの言っても仕方がないんだなー。
「歯は身体」と思ったのは・・・。

今から、25年位前の事だった。
今現在の、診療体系の根幹を築き上げた名事件である。

顎のリハビリ診断